京仏具 千有余年の老舗 真言宗各本山御用達・密教仏具専門店

田中伊雅仏具店

  1. トップページ > 
  2. 京仏具の話

京仏具の話

1.京仏壇・京仏具に息づく伝統の技法

技法  仏壇の起源は、中世の貴族や武家などが信仰の対象として仏像や名号、先祖の位牌を祀っていた持仏堂にあります。江戸時代の半ばには、この持仏堂が『仏間』として一般民家の一間を占めるようになり、その仏具の『厨子』が現在の仏壇の原型になったと考えられています。
 それでは、何十年、何百年と半永久的に美しくお祀りできるこのお仏壇は、どのようにして作られているのでしょうか。

2.京仏壇・京仏具の「木地」

木地  京仏壇の木地には、2,3年自然乾燥させた木曽桧や松が多く用いられます。これは、 桧や松が柔らかすぎず、硬すぎず彫刻や細工がしやすい上に耐久性に優れ、漆塗りとの相性が大変に良いためです。
この木材の特長を生かして、仏壇の本体を作るのが『木地師』。手作業で作った細かな部品を組み立てて屋根にする『屋根師』。本尊を安置する壇を作る『須弥壇師』。そして図柄を厳選し、小刀、ノミなどで手彫りする『彫刻師』。京仏壇の木地を完成させるためには、これだけの専門分野の技術が駆使されているのです。
 さらにこれらを、『ほぞ組』と呼ばれる、木材と木材に突起《凸凹》を作り接合させる 組み込み式で加工するため、何年経ってからでも補修やお洗濯がしやすく、半永久的に美しくお祀りいただけるようになるのです。

3.京仏壇・京仏具の「漆」

漆  漆は、遙か縄文時代より表面塗料剤、接着剤として用いられてきました。優美な光沢をたたえ、防水・防腐性に優れた漆の塗肌の美しさ、塗膜の強さは、京仏壇・京仏具には欠かせないものです。
 美しく堅牢に仕上げるために重要なのは、下地の工程です。まず、木地に生漆や砥粉を用い、桧ヘラや刷毛等の道具を使って塗り、砥石やペーパーなどで何度も研ぎ上げて、下塗り、中塗り、上塗りの工程を手塗りで重ね、より重厚味がでるように仕上げます。そして、さらに細心の注意を払って行われるのが乾燥です。漆が「乾く」というのは単に物質内の水分が消滅することではありません。漆の中に含まれているラッカーゼが空気中の酸素をとり、主成分ウルシオールを酸化重合させて液体から固体に変えることです。つまり漆を乾かすためには、適当な温度と湿度《通常で温度は20〜25度、湿度は75〜85%》を与え、酸化を促進する事が必要なのです。
 そのため漆の乾燥には、温度、湿度調整のできる漆風呂を用います。手塗りのため、早く乾くと塗り刷毛目が残ったり、湿度によっては色目が変わったり、また埃や虫が付くと改めて塗り替えなければなりません。通常で6時間から10時間、高度な技術と経験を駆使し、細心の注意をもって 作業することで、強く美しい漆塗りが完成するのです。京仏壇・京仏具には、前述のように手塗りの塗り放しで仕上げる方法と、油分を含まぬ上塗漆を塗り、その上を種油や角粉《各種炭》で研いだり磨いたりして光沢を出し、鏡面のように仕上げる『鑞色』という京都独特の技法も使われます。

4.京仏壇・京仏具の「金箔」

金箔  仏陀の三十二相の中に《身金色相》というのがあり、古来より如来仏を金色で表すことが定められています。また、堂内に多くの仏像を祀るとき、その主たる像には如来像同様に金色にしているものもあります。永遠不滅の象徴である金は、金箔が発明されると共に、このような仏像はもとより、仏具の加飾にも多用さるようになり、今日に至っています。
 京仏壇・京仏具の金箔押しの特徴は、独特の箔押漆を平均に塗り、綿で拭きならし拭き上げて、金箔を箔箸にはさみ押して《張る》という手法です。漆の特性は四季の環境の変化により異なるため、箔押しの大変重要な工程には、高度な熟練と感覚による技術が必要とされ、京都独特の重厚味ある光沢が守り継がれているのです。
 ちなみに、金箔の厚さは約100万分の6.5cm。大豆一粒の大きさの金から11cm角の金箔が100枚とれます。また金箔は静電気を帯びているために、直接指で触れたり金属を近付けることはできません。このため金箔の扱いには、ピンセット状の竹製の箔箸を用います。

5.京仏壇・京仏具の「蒔絵」

蒔絵  古くより塗料は接着剤として使われてきた漆で文様を描き、その上に金箔や銀粉を蒔いて図柄を表現してきたものを『蒔絵』といいます。漆は金粉や銀粉を固着させるのに最適です。また適度な温度や湿度によって乾燥するので、時間をかけて文様を描くことができます。この漆の特性を生かして蒔絵の技法が生まれ、日本独自の美術工芸として発達し、洗練されてきたのです。金粉や銀粉には、6種類ほどの形があり、それぞれに20段階もの粗さがあります。そして使用する粉によって、消し粉蒔絵、研ぎ粉蒔絵、さらに高度な肉合い(ししあい)蒔絵などの技法の種類があります。
 たとえば紋を1個描くのに、細かい金粉を使う消し粉蒔絵なら、蒔いて乾燥させるだけの単純な工程です。なお使用する粉の量も比較的少なく仕上がります。これに対して粗い金粉を使う研ぎ粉蒔絵なら、蒔いた上から漆で塗り固めて木炭で研ぎ出さねばならず、使用する金粉の量は百数十倍。工程も時間も数十倍を要します。その分、同じ平蒔絵でも金の厚みが変わり、強さも重厚感も増すのです。この他に立体感を出す高上げなどの様々な工程を加えると、紋一つの蒔絵にもまさに無限ともいえる表現ができ、この無限の表現技術を持つのが京蒔絵の特長のひとつなのです。

6.京仏壇・京仏具の「錺(かざり)金具」

かざり金具  装飾的なものから、建物の構造上の補強のための金属、戸や障子を取付ける蝶番等を、錺金具といい、古くからお寺の建物、内陣仏具等に、さまざまな形状のものが用いられてきました。仏壇はお寺の内陣を縮小して作られるようになったので、錺金具も内陣を模写して縮小して作られます。まず素材である銅・真鍮板で形を作り、タガネで彫刻《地彫・毛彫など》を施します。模様以外の地には一粒ずつナナコをまき《打ち》ヤスリやキサゲなどを使って加工し、木鎚や金鎚で曲げたりしてそれぞれの形にととのえます。最後に表面に金メッキや銀メッキ、漆で着色して仕上げ、お仏壇の組立の工程の時に、鋲を使って取り付けます。素材は、丈夫で加工しやすい銅板や真鍮板が主ですが、純金や純銀なども用いることがあります。

7.京仏壇・京仏具の「金属製品」

金属製品  京仏具の金属製品には、鋳造品と板ものがあります。花立・火立・香爐・りん・仏飯器などの鋳造品は、銅に亜鉛を合金した真鍮《黄銅》や錫を合金した砲金《青銅》などの銅合金で作られます。昔からの鋳造法には、蝋型鋳造法、焼型鋳造法、惣型鋳造法があり、これらの製法で作られた鋳物《生地》を、ロクロを使用して切削したり、ヤスリやキサゲを使って手作業で鋳肌を整えて加工。さらにタガネを用いて彫刻を施す場合もあります。着色には、漆を焼き付けますが、最上品は煮て酸化させて色を出す煮色着色をするものもあります。また、真鍮製品には、バフ研磨でツヤを出して仕上げるものもあります。吊灯籠などの板ものは、主に銅板で作られます。銅板を形に切り彫刻を施し、曲線や折り曲げで形を整えて加工し金メッキや銀メッキ等で仕上げます。
ページの最初に戻る