京仏具 千有余年の老舗 真言宗各本山御用達・密教仏具専門店
この度は本堂・客殿改築事業に伴い、内陣並びに、位牌堂御荘厳を承りました。法華寺様は、ご寺院名からもお察しのように国分尼寺として建立されました。天平十三年の聖武天皇、光明皇后勅願寺となります。
ご住職様は国分尼寺としての風格にこだわっておられるようでした。私共にはその風格がどういうことなのかが分からず、思案に暮れたことを思い出します。
まず、大壇はご本山、西大寺様什宝の大壇に範を求められ、田中伊雅秘伝の気魄とともに造り込んだものです。脇机は南都特有の造り。恐ろしく華奢な木地は通常二間造りですがここでは一間となり、思わず木地師と顔を見合 わせたのでした。と申しますのも木の木目や癖を極限まで見抜く、指物師の素養が必要となるからです。
ご本尊十一面観音のご修復を賜りました。また須弥壇上、両翼に阿弥陀如来座像と対をなすよう薬師如来座像のご用命も併せて賜りました。
なんとなくこの時に、おぼろげにご住職様のこだわりが垣間見えたような気がしたのでした。が、今から思えばそう見えただけで、実は田中伊雅の基軸至上主義からなる荘厳算出の道程上での思い込みであったのかもしれま せん。本堂の基軸は大壇。大壇を透して仏像、そしてご住職様へ、それから総てを踏まへてお荘厳が成り立つよう想念せねばなりません。しかし、結果はご住職様の胸の内ということでしょうか。
山内も奇麗に整備され、お参りの方々の表情も手伝い、穏やかな時間が清々しくながれています。
ここで、客殿を拝見してやっと分かったのでした。ご住職様こだわりの糸口が床飾りにあったのです。一双仕立ての軸と華にご住職様のこだわりの一端が露出していたの ではないかと断じます。まさに、木々は陽に向う、であります。
塔婆はご住職様ご実兄の、龍門山、無量寺ご住職、龍田宥仁様の書であられます。
ご用命、誠にありがとうございました。